新規学卒者の採用内定取消を行う際の注意点

Posted on 2020/12/11

 新型コロナウイルス感染症の拡大により、新規学卒者で内定を出していたにも関わらず、採用内定取消を行わざるを得ない企業が見られるようです。そこで今回は新規学卒者について、内定取消を行う際の注意点をとり上げます。

[1]採用内定の法的性格

 採用内定の法的性格は、会社が内定者に対して採用する旨の通知を行い、それに対して内定者が誓約書等を提出した時点で、労働契約が成立するというものです。ただし、新規学卒者については入社日の到来という始期が付いていたり、学校を卒業するという条件がついていたりすることから、最高裁(大日本印刷事件 昭和54年7月20日 最高裁二小判決)では採用内定について、「始期付解約権留保付労働契約」が成立したものと判示しています。
 このように採用内定によって労働契約が成立することから、採用内定取消は労働契約の解約、つまり解雇に当たり、労働契約法第16条の解雇権の濫用でないかが問われます。そのため企業は、合理的と認められる正当な事由がなければ採用内定取消を行うことはできないとされ、その事由として以下のようなものが挙げられます。


  1. 条件付き労働解約の場合の条件の達成(未達成)
    学校を卒業できなかった場合や、入社の際に必要と定められた免許・資格が取得できなかった場合等
  2.      
  3. 採用内定取消事由を約束している場合のその取消事由の発生
    健康を著しく害した場合や、履歴書や誓約書などに虚偽の記載がありその内容や程度が採否判断にとって重大なものである場合等
  4. その他の不適格事由の発生
    犯罪行為による逮捕、起訴等

 よって、新型コロナウイルス感染症の拡大で業務量が減少しているからといって、簡単に内定取消が認められるわけではありません。

[2]必要な手続き

 採用内定取消を行わなければならない場合の手続きとしては、2点あります。1点目は、解雇予告等の解雇手続きを適正に行う必要があり、また、内定者が採用内定取消の理由について証明書を請求してきた場合、遅滞なくこれを交付しなければなりません。
 2点目は、職業安定法施行規則第35条第2項に基づき、所定様式「新規学校卒業者の採用内定取消通知書(様式19)」により、ハローワークおよび大学・高校等の長に通知することです。この内定取消が「事業活動縮小を余儀なくされているとは明らかに認められない」等の場合、求職活動をする学生の適切な職業選択に役立つよう、厚生労働大臣が企業名公表を行うとしています。

 新規学卒者にとって、就職は職業生活の第一歩を踏み出す重要な機会であることから、内定取消とならないために、企業は最大限の経営努力と就職先の確保に向けた支援が求められます。

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