増加する新型コロナウイルス感染症に関する労災請求と認定事例

Posted on 2020/09/08

 新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の感染者が増え続けており、新型コロナに関する労災請求件数も増加しています。厚生労働省は2020年8月14日18時現在のものとして、899件の請求件数、363件の支給件数があることを公表しました。併せて新型コロナに係る労災認定事例も公表しています。そこで今回は、新型コロナの労災認定の考え方と事例をみておきましょう。

 

[1] 労災認定の考え方

 厚生労働省は、業務に起因して新型コロナに感染したものであると認められる場合には、労災認定をし、労災補償給付を行うことにしており、「調査により感染経路が特定されなくとも、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められる場合には、これに該当するものとして、労災保険給付の対象とすること」という通達(令和2年4月28日基補発0428第1号)を発出し対応しています。


 また、この通達の中で、医療従事者等以外の労働者について、以下のように取扱いが示されています。

  • 医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されたもの
     感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合には、労災保険給付の対象となること。
  • 医療従事者等以外の労働者であって上記以外のもの
     調査により感染経路が特定されない場合であっても、感染リスクが相対的に高いと考えられる次のような労働環境下での業務に従事していた労働者が感染したときには、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められるか否かを、個々の事案に即して適切に判断すること。
     この際、新型コロナウイルスの潜伏期間内の業務従事状況、一般生活状況等を調査した上で、医学専門家の意見も踏まえて判断すること。
    (ア)複数(請求人を含む)の感染者が確認された労働環境下での業務
    (イ)顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務

[2] 感染経路が特定されない場合の認定事例(医療従事者等以外の労働者)

 以下では、厚生労働省より案内されている医療従事者等以外の労働者であって感染経路が特定されない場合の事例を確認しておきます。

 小売店販売員のGさんは、店頭での接客業務等に従事していたが、発熱、咳等の症状が出現したため、PCR検査を受けたところ新型コロナウイルス感染陽性と判定された。
 労働基準監督署において調査したところ、Gさんの感染経路は特定されなかったが、発症前の14日間の業務内容については、日々数十人と接客し商品説明等を行っていたことが認められ、感染リスクが相対的に高いと考えられる業務に従事していたものと認められた。
 一方、発症前14日間の私生活での外出については、日用品の買い物や散歩などで、私生活における感染のリスクは低いものと認められた。
 医学専門家からは、接客中の飛沫感染や接触感染が考えられるなど、当該販売員の感染は、業務により感染した蓋然性が高いものと認められるとの意見であった。
 以上の経過から、G さんは、新型コロナウイルスに感染しており、感染経路は特定されないが、従事した業務は、顧客との近接や接触が多い労働環境下での業務と認められ、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと判断されることから、支給決定された。

 感染経路が分からなくても、接客などで業務によって感染した可能性が高い場合は労災として認められる場合があることから、その可能性があれば申請を行うようにしましょう。

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