障害者雇用において求められる合理的配慮の提供義務とハローワークへの相談

Posted on 2020/07/31

 2018年4月より、障害者の法定雇用率が2.2%(民間企業の場合)となり、2021年4月までには2.3%に引き上げられることが決まっています。企業では障害者の雇用を進めていますが、その際には障害者に対する合理的配慮の提供が義務となっています。そこで今回は、この合理的配慮の提供と、先日、公表された障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に関する調査結果をとり上げます。

1. 合理的配慮の提供義務とは

 合理的配慮の提供とは、募集および採用時においては、障害者と障害者でない人の均等な機会を確保するための措置を講じることであり、採用後においては、障害者と障害者でない人の均等な待遇の確保または障害者の能力の有効な発揮の支障となっている事情を改善するための措置を講じることをいいます。
 具体的にどのような措置をとるかは、企業と障害者とでよく話し合った上で決めることになりますが、その参考例としては以下のものが挙げられています。

  • 就業時間・休暇等の労働条件面での配慮が必要か
  • 障害の種類や程度に応じた職場環境の改善や安全管理がなされているか
  • 職務内容の配慮・工夫が必要か
  • 職場における指導方法やコミュニケーション方法の工夫ができないか
  • 相談員や専門家の配置または外部機関との連携方法はどうか
  • 業務遂行のために必要な教育訓練は実施されているか など

2.ハローワークへの相談内容

 先日、厚生労働省より、「雇用の分野における障害者の差別禁止・合理的配慮の提供義務に係る相談等実績(令和元年度)」が公表されました。改正障害者雇用促進法が2016年4月に施行されて以降、障害者差別および合理的配慮の提供義務に関する相談は増加傾向にあり、2019年度にハローワークに寄せられた相談は合計254件でした。その内訳は障害者差別禁止が75件、合理的配慮が179件であり、合理的配慮に関する対応事例として、以下のものが紹介されています。


[相談内容]

 上司から高圧的な指示がされ、パワハラと感じる。障害に対応した機材等の使用についての要望を聞いてもらえない。


[ハローワークの助言]

 ハローワークによる事業所への聴取の結果、心理的虐待の事実等法違反は確認されなかったものの、お互いの意思疎通が不十分であることから、配慮に欠けていた発言が認められた。障害特性に応じた業務指示の伝え方について助言するとともに、本人との話し合いを行うよう助言。事業所は本人との話し合いを通じ、お互いの誤解を解消し、業務指示の伝え方等を改善。


[相談内容]

 障害があることを人事課と上司以外に開示することを希望しないが、現在、障害特性に応じた業務内容の調整が行われず、職場の同僚への遠慮から通院のための休暇を取得しづらいなど、心身の負担が大きい。


[ハローワークの助言]

 ハローワークによる事業所への聴取の結果、法違反は確認されなかった。ハローワークから、本人の求める合理的配慮の内容等について事業所に説明を行い、本人との話し合いを行うよう助言。事業所では、本人と面談を行い、本人の求める合理的配慮の内容を踏まえ、対人業務を免除するとともに、本人の希望する範囲での説明を職場内に行うなどの対応を改善。


 企業と障害者の間で何らかの紛争が発生したときには、企業と障害者の間で自主的な解決をすることが求められますが、解決したいときには、都道府県労働局長による助言・指導・勧告が行われたり、障害者雇用調停会議によると調停が行われたりします。厚生労働省のホームページには合理的配慮指針事例集があり、障害類型別に具体的な配慮の事例が紹介されています。今後、法定雇用率が引き上げられることに伴い、障害者を雇用する機会が増加することも考えられます。事例集を活用しながら対応を検討しましょう。

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