年休の計画的付与制度と運用時の留意点

Posted on 2022/10/21

年休の計画的付与制度と運用時の留意点 今月は、厚生労働省が設定した「年次有給休暇取得促進期間」です。2020年5月29日に閣議決定された少子化社会対策要綱などにおいて、2025年までに年次有給休暇(以下、「年休」という)の取得率を70%とすることが目標に掲げられていますが、2021年の就労条件総合調査の実績は56.6%となっており、目標とは乖離があります。そこで今回は、取得促進のひとつとして挙げられている年休の計画的付与制度の運用と留意点をとり上げます。

[1]計画的付与の方法

 計画的付与制度とは、年休の付与日数のうち5日を超える残りの日数について、労使協定を締結する等により、計画的に休暇取得日を割り振ることができる制度です。その方法には以下のようなものがあります。

  1. 企業や事業場全体の休業による一斉付与
    製造部門など、操業を止めて全従業員を休ませることのできる事業場などで活用
  2. 班・グループ別の交替制付与
    流通・サービス業など、定休日を増やすことが難しい事業場で活用
  3. 年休付与計画表による個人別付与
    夏季、年末年始、ゴールデンウィークのほか、誕生日や結婚記念日など従業員の個人的な記念日を優先的に充てるケースで活用

どの方法を導入するかは労使に委ねられており、労使協定に具体的な付与の方法を記載することになっています。

[2]計画的付与の運用上の留意点

 計画的付与を運用していく上での留意点としては、対象者の決定と、年休の付与日数が少ない従業員や計画的付与日時点で年休が発生していない従業員への対応があります。

  • 対象者の決定
    育児休業や産前産後休業を取得することが分かっている従業員や、定年等によりあらかじめ退職が決まっている従業員は、休業日や退職日以降の日が計画的付与日になる可能性があります。計画的付与の対象者は労使協定で定めることができることから、このような従業員はあらかじめ計画的付与の対象から外しておくとよいでしょう。
  • 年休が少ない従業員等への対応
    [1]の1のように企業や事業場全体の休業による一斉付与の場合には、新規採用者等で計画的付与日においてまだ年休が付与されていない従業員がいるようなケースがあります。計画的付与日に休ませるときには、欠勤扱い(無給)とすることはできないことから、特別有給休暇の付与や、平均賃金の60%以上の休業手当を支払うなどの対応が求められます。

 計画的付与の導入によって年休の取得率が向上することが見込まれ、また、年10日以上の年休が付与された従業員に対して少なくとも5日の年休を取得させる義務(時季指定義務)の推進にもつながるでしょう。ただし、新たに計画的付与制度を導入する場合、年休を希望する日に取得したい従業員にとっては、自らの意思で取得できる日数が少なくなるため、不満を抱きやすいという課題も存在します。制度導入時には労使で十分議論するとともに、計画的付与日の日数をまずは1~2日から始めるといった工夫をしてもよいかもしれません。

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